我孫子武丸「８の殺人」(講談社ノベルス)

デビュー作。速水三兄弟登場。
四角い本体に中庭、中庭を横切る渡り廊下。上から見れば丁度デジタルの８の字型の屋敷の渡り廊下で主が射殺された。幸運なことに廊下と中庭を挟んだ反対側に怪しい人影を娘たちが目撃していたのだが。

J.P.ホーガン「マルチプレックス・マン(上・下)」

しがない高校教師がある日目覚めると、自分は全くの別人になっていた。知らない男の身分証で、チェックインした記憶のないホテルから自分の町に帰ると、家には他人が住んでいた。同僚を訪ねれば、赤の他人と扱われ、はてに自分は何ヶ月も前に死んだと教えられる。
西側諸国がエコ・ファシズムによる全体主義に走り、東側諸国が自由主義のもとで宇宙へ進出する近未来を舞台にしたSFスリラー。

「Aniversaly50」(カッパノベルス)

カッパノベルス創刊50周年記念アンソロジー。

綾辻行人「切断」
深泥が丘奇談。50にきりわけられた死体の謎。

有栖川有栖「雪と金婚式」
雪のちらつく金婚式の翌朝、離れで弟の他殺死体が発見された。雪のおかげで犯行時刻は狭まったが、有力な容疑者たちにはアリバイがあった。

大沢在昌「50階で待つ」
新宿界隈で噂される裏社会の黒幕。彼に憧れる若者はついに招かれる。「50階で待つ」と。

島田荘司「進進堂世界一周、シェフィールド、イギリス」
世界中を旅した大学の先輩御手洗さんが今日話してくれるのは、イギリスで出会ったある学習障害者の挫折と栄光。

田中芳樹「古井戸」
その古井戸にはいわれがあった。曰わく50代目の当主を祟ると。その50代目はこの伝説を気に病んで、スコットランド・ヤードに警護を頼んだが。

道尾秀介「夏の光」

宮部みゆき「博打眼」
時は江戸時代。ある日近江屋に飛んできた異形のモノ、それは先祖が契約してしまった博打眼だった。このままでは主人が博打打ちにされて取り殺されてしまう！

森村誠一「天の配猫」
迷い猫を保護したホームレスが元の飼い主に猫を届けに行くと、彼女は何者かに殺されていた。
上京早々に全財産を摺られた所を被害者に救われたという青年、被害者の洗濯物を盗み出した下着泥棒。

横山秀夫「未来の花」
証券マンは胸を一突きにされて死んでいた。病室を訪ねた検視官補から見せられた現場写真から倉石は何を読みとるのか。

柳広司「饗宴 ソクラテス最後の事件」

エジプトで発見された偽書の翻訳という形式で書かれた歴史ミステリー。
古代ギリシャのポリス・アテナイに暮らすソクラテスとその友が遭遇する事件を描く。
最初の事件は大量のリンゴを抱えた青年の突然死であった。リンゴで両手は塞がっており自ら毒を呷ることはできず、また、近くに人もいなかった状況から自然死と判断される。ところが、怪力で引き裂かれた異国人、斧で虐殺される伊達男と立て続けに殺人事件が起きる。怪力の小人ホムンクルスを手なづけると噂されるピュタゴラス教団の仕業なのか？

J.P.ホーガン「ミラー・メイズ(上・下)」

増え続ける規制による経済停滞に悩むアメリカの大統領選に「経済不干渉」を掲げて歴史的勝利を収めた護憲党。しかし、それを喜ばない者もいた。ほんの一握りの黒幕たち、彼らはアメリカのみならず全世界の経済、軍事、政治を闇で操り、ライバルたちを「規制」で蹴落とし利益を貪ってきたのだ。黙って護憲党に政府を渡すはずがないが――
新米弁護士メルは学生時代の友人から久しぶりに掛かってきた電話から、護憲党を巡る策略の中に巻き込まれる。果たして護憲党は無事に政権に着くことができるのか。

ローレンス・ブロック「殺しのリスト」(田口俊樹訳/ハヤカ ワミステリ)

殺し屋ジョン・ケラー第2作。長編(連作短編？)

いつも通りの遠出の仕事。しかし出迎えの男は間抜けで、モーテルの上の部屋では暴走族がどんちゃん騒ぎ、部屋を換えてもらえば元の部屋で殺人事件と不運続き。ところがトラブルはこれで終わらず、別件の遂行後、喫茶店でコートを盗まれ、さらにその泥棒が通り魔的に刺し殺される。もしかすると、ケラーが狙われているのではないか？

道尾秀介「向日葵の咲かない夏」

1学期の終業式の日、休んだクラスメイトS君に配布物を届けに行った僕は、首を吊って死んでいるS君を見つける。ところが先生と刑事とがS君の家に駆けつけたとき、死体は消えていた。
死体はどこに消えてしまったのか。いや、そもそもS君は本当に死んでしまったのか。
大人たちは僕の目撃証言を疑うが、S君の家にも痕跡が発見される。
そして数日後、生まれ変わったS君が僕の部屋に現れると、自分の死体を見つけてほしいと頼んだ。

スティーブ・ホッケンスミス「荒野のホームズ」(日暮雅通訳/ ハヤカワミステリ)

兄オールド・レッドと弟ビッグ・レッドのアムリングマイヤー兄弟はしがないカウボーイである。仕事にあぶれていた兄弟は悪名高い牧場で働くことになった。嵐の夜、普段も馬に乗らない牧場の事務が落馬して踏み荒らされた無惨な姿で発見される。事務員の死と秘密主義的な牧場の運営には何か裏がありそうだが。オールド・レッドは牧場の秘密を探り出し、憧れのシャーロック・ホームズのような名探偵になれるのか？

柳広司「吾輩はシャーロック・ホームズである」

開業医ワトスン博士の元に連れてこられた患者は自分がシャーロック・ホームズであると信じる神経衰弱の日本人留学生、夏目漱石だった。
仕事でロンドンを離れていた本物のホームズから、自分が戻るまで夏目をホームズとして扱うように、との伝言が届き、ワトスン博士は夏目を預かることになる。
夏目の神経衰弱はどうやらある女性への片思いのせいらしい。しかして2人が招かれた降霊会で出会ったその女はなんとアドラー嬢だった！　しかもその降霊の最中、誰も動けなかったはずなのに霊能者が毒殺されてしまう。夏目ホームズとワトスン博士は事件を本物のホームズのように解決できるのか？

小林泰三「モザイク事件帳」

ミステリの代表的小ジャンルをまとめた連作？短編集。各話で所々、人物が共有されている。

犯人当て「大きな森の小さな密室」
倒叙ミステリ「氷橋」
安楽椅子探偵「自らの伝言」
バカミス「更新世の殺人」
??ミステリ「正直者の逆説」
SFミステリ「遺体の代弁者」
日常の謎「路上に放置されたパン屑の研究」